ホームページを新しくしたり、サーバーを引っ越したりした翌日から、問い合わせメールが1通も来なくなる。これは珍しい事故ではなく、原因もだいたい決まっています。そしてほとんどの場合、引っ越しの前に防げます。
メールは「アドレスごと」ではなく「ドメインごと」に移る
ここがいちばん誤解されるところです。
メールの配達先は、info@あなたの会社.com のような1つ1つのアドレスに対して決まっているのではなく、「あなたの会社.com」という住所そのものに対して1つだけ決まっています。郵便でいえば、部屋ごとの表札ではなく、建物あての「転送届」が1枚あるようなものです。
だから引っ越しでこの届けを書き換えると、そのドメインにぶら下がっている全部のアドレスが、同時に新しい行き先に変わります。1つだけ古いままにしておく、ということは、そのままでは起こりません。
いちばん危ない返事
制作会社から「使っているメールアドレスを教えてください」と聞かれたときに、こう答えてしまうことがあります。
「このアドレスはもう使っていないので、対応は不要です」
この「対応不要」を、多くの方は「今までどおり動いたままでいい」という意味で言っています。ところが受け取る側は「移さなくていい」と読みます。そして届けを書き換えた瞬間、その「対応不要」だったアドレスは、今までどおり動くのではなく、止まります。
やっかいなのは、止まったことに気づくまで時間がかかることです。ほとんど使っていないアドレスほど、誰も見ていません。半年前の取引先や、名刺や、古いチラシに載っているのはそのアドレスだったりします。
引っ越しの前に、自分で確かめる3つ
1. 使っているアドレスを、記憶ではなく一覧で数える
「うちは info と代表の2つだけ」と思っていても、実際には請求用・予約用・スタッフ個人用と、忘れているものが出てきます。サーバーの管理画面にはメールアドレスの一覧があります。そこを開いて、画面に出ている数をそのまま数えてください。ログインの仕方が分からなければ、制作会社に「メールアドレスの一覧を見せてください」と頼めば済みます。
思い出しながら数えると、必ず取りこぼします。道具があるのに記憶で数えない、というのがここの要点です。
2. 「移さないアドレス」があるなら、その場で伝える
古いままにしたいアドレスがあるなら、「使っていないので対応不要」ではなく、こう伝えてください。
「このアドレスだけは、今までどおり受信できる状態のまま残してください」
一部だけ古い場所に届け続ける設定は、実際にできます(分割配信といいます)。ただし頼まれなければ入れません。言葉の違いだけで、結果が「動き続ける」と「止まる」に分かれます。
3. ドメインの有効期限と、自動更新の設定
引っ越しの話とは別に、ここも一緒に見ておくと安全です。ドメインが切れると、ホームページもメールも同時に止まります。引っ越し作業そのものが無意味になるので、期限がいつで、自動更新が入っているか、支払いに使っているカードが失効していないかを先に確認してください。
切り替えたあと、その日のうちに試すこと
管理画面の「登録済み」という表示は、設定が保存されたことしか意味していません。実際に届くかどうかは別です。自分で1往復させて確かめてください。
- 受信——ご自身のスマホの個人アドレス(プライベートのGmailなど)から、会社の全部のアドレスに1通ずつ送る。全部届くか
- 送信——逆に、会社の各アドレスから個人アドレスへ1通ずつ送る。届くか
- 迷惑メール——届いた側で、受信トレイに入ったか、迷惑メールに落ちていないか
3番を飛ばさないでください。「届いている」と「読まれている」は別です。迷惑メールに落ちていると、届いてはいるのに誰も気づきません。
「送れる」ほうも、実は変わっている
もうひとつ、あとから効いてくる話があります。
いまのメールは、受け取る側が「このメールは本当にその会社から出ているか」を機械的に確かめています。確かめる材料は差出人の表示名ではなく、実際に送り出した場所です。
つまり、メールソフトの差出人だけを会社のアドレスにしても、送信そのものを古いサーバーから出し続けていれば、受け取る側からは「名乗りと出どころが合わない」と見えます。すぐ迷惑メール行きになるわけではありませんが、だんだん届きにくくなる方向に効きます。
ここは自分で判断しにくいところなので、引っ越しを頼むときに一言だけ聞いてください。
「送信の設定も新しいほうに移りますか。差出人だけ変えて、送り出す場所が古いままになっていませんか」
まとめ
- メールの行き先はドメイン単位。1つ移せば全部移る
- 「使っていないので対応不要」は、止めていいと読まれる。残したいなら「残してください」と言う
- アドレスの数は記憶ではなく管理画面の一覧で数える
- 切り替えた日に、全アドレスで受信と送信を1往復試す。迷惑メールも見る
引っ越しそのものは、きちんとやれば止まらない作業です。止まるのはたいてい、聞かれた側と答えた側で「対応不要」の意味がずれたときです。

